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2014.12.11 Thursday | category:-
超10医療 〜田中眞治医師の寄稿〜
2013.04.25 Thursday | category:超10医療
これまでの原稿に書いたように1954年生まれの私にとって幼小児期から学童期にかけて病院にかかった記憶は数えるほどしかありません。川に飛び込み空き缶で足の裏を切って隣町の外科病院で縫合処置を受けた事、小学校の帰り道、神社の境内で白いへびを発見し、そのめずらしさに捕まえようとして足をかまれマムシの血清を打たれた事、あとは中耳炎になって隣町の耳鼻科に母親に連れられて通院した事くらいです。これほど私にとって病院は遠い存在でした。今になって思うのは保険証がちゃんとあったのだろうかということです。
日本全国では1955年頃まで、農業や自営業者、零細企業従業員を中心に国民の約3分の1に当たる約3000万人が無保険者で社会問題となっていました。その後1958年に国民保険法が制定され、61年に全国の市町村で国民保険事業が始まり。「だれでも」「どこでも」「いつでも」保険証1枚あれば医療を受けることができるようになりました。
その後1970年代には全国で老人医療費無料制度が広まり、サラリーマンの医療費窓口負担は最初ゼロでしたが、1980年代になり次第に1割負担から2割となり、現在では3割負担となっています。2013年の現在、国民保険料を払えず、病院への受診が手遅れになり死亡する人が年間数十人もいることが報告されており、国民皆保険制度は危機的な状態となりました。
このように、団塊の世代の人たちは戦後の保険のない社会保障制度の貧弱な時代、1961年以降の国民皆保険制度の開設と充実の時代、その後の抑制の時代をすべて経験しているのです。言い換えれば貧しくて病院にかかれない時代、保険証さえあれば医療費の心配をしなくてもいい時代、保険証があっても窓口負担が3割ある時代などのすべてを経験しているのです。社会保障制度の歴史的証人としても今後の日本の社会保障制度をどのように設計すればいいのか発言する責任があると言えます。
私自身は窓口負担の心配なくいつでも必要な時に医療が受けられるような制度をさらに充実させることが必要だと考えています。