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2014.12.11 Thursday | category:-
超10医療 〜田井祐爾医師の寄稿〜
2012.09.12 Wednesday | category:-
「減量しなくてもエクササイズで睡眠時無呼吸の重症度改善」
私のブログに載せている2009年5月の古い記事http://life-spport.cocolog-nifty.com/lifelonglifelog/2009/05/post-9dc3.html>に問い合わせのコメントが続いていたんで内容の古さが気になっていた。アップデイトをしなきゃと思いながら随分時間が経ってしまった。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状改善のエクササイズをみると、全身運動のエクササイズと上気道の筋肉を鍛える部分的エクササイズがあることに気がつくだろう。今日紹介する報告は全身運動のエクササイズがSASの症状改善に効果があるかどうか調べた報告で、今年5月の雑誌The American Journal of Medicineに掲載されたものだ。
この報告を読むと、私が先に紹介した2009年の報告<http://life-support.cocolog-nifty.com/lifelonglifelog/2009/05/post-9dc3.html>に関する解説もあったんで文献のディスカッションを中心に説明してみよう。
SASの最大の危険因子は肥満だ。肥満解消になる全身運動のエクササイズをすればSASの重症度改善に繋がると誰もが考えるだろう。しかし、体重の変化に無関係で独立した因子としてエクササイズがSASの重症度改善に効果があるかどうかまだ明確にされていなかった。今年5月の雑誌The American Journal of Medicineでエクササイズの長期的な効果が示された。
この報告を読むと、私が先に紹介した2009年の報告<http://life-support.cocolog-nifty.com/lifelonglifelog/2009/05/post-9dc3.html>に関する解説もあったんで文献のディスカッションを中心に説明してみよう。
SASの最大の危険因子は肥満だ。肥満解消になる全身運動のエクササイズをすればSASの重症度改善に繋がると誰もが考えるだろう。しかし、体重の変化に無関係で独立した因子としてエクササイズがSASの重症度改善に効果があるかどうかまだ明確にされていなかった。今年5月の雑誌The American Journal of Medicineでエクササイズの長期的な効果が示された。
ウイスコンシン・スリープ・コホート試験に登録されている30歳から60歳の成人1521名を無作為に選択して試験開始時と4年ごとにポリソムノグラフィ(PSG)検査と2年ごとににエクササイズ情報を集めた報告だ。
エクササイズの情報は、習慣的なエクササイズ、例えばジョギング、スポーツ活動、エクササイズ教室、自宅でのワークアウトやジム利用などを週に何時間しているのか質問票から得ることで、時間によって、0時間/週、1〜3時間/週、4時間以上/週の3つのカテゴリーに区分している。
SASの評価は、ポリソムノグラフィ(PSG)を使ってAHI(Apnea Hypopnea Index)スコアを計測している。AHIスコアっていうのは、睡眠中に10秒以上の無呼吸(Apnea)もしくは10秒以上気道流速が低下(Hypopnea)が1時間当たり何回生じたかで重症度を判定している。AHIスコアが5以上でSASの診断がつけられ、20以上で中等度(この文献では15以上)、40以上で重症になる。
結果を言うと、試験開始時にエクササイズをしていない人のリスクを1とすると、8年経過すればエクササイズを週4時間以上している人は、SAS軽症(AHIスコア5以上)リスクが0.59(41%低下)、SAS中等症(AHIスコア15以上)リスクは0.47(53%低下)に有意に低下する。BMI値で補正してやると、統計的な有意差は消失してしまったがトレンドが残った。この結果は左の図の黒塗りの■で示された結果だ。
8年の追跡期間中にエクササイズが増えた人や減った人がいる。エクササイズの時間が増えても変化しなかった人と比べてAHIスコアは変わらなかった、しかし、エクササイズの時間が減った人は、明らかにAHIスコアが悪化(上昇)した。BMI値で補正すると統計的有意差は先ほどの結果と同様に消失してしいトレンドだけになる。
きびしい物の見方をする人だったら統計的有意差が示されていないので、この報告だけでエクササイズがSASの重症度改善の独立因子になっているかどうかわからない。しかし、エクササイズが減量以外の何か別の影響を与えてSASの重症度が改善されている可能性は残り、以前報告された横断解析により得られたAHIスコアとエクササイズの負の相関(BMIで補正後)をサポートする結果にはなった。
11名の被験者にエクササイズ(毎週2時間のエアロビクス教室と2時間のウエイトトレーニングを6ヶ月間)をさせた小規模な介入試験で、体重が変化しなかったにも関わらず、AHIスコアが27%低下した報告や、10名のエクササイズグループ(呼吸法とエアロビクスを週に5時間、12週間)が体格の変化無くAHIスコアを27.5%低下させたという報告とも結果は一致した。
さらにもう一つ、エクササイズでBMI値が5%低下したらAHIスコアは45%低下した結果もある。
全身運動のエクササイズがどうしてSASの重症度改善に繋がるのか疑問は生まれる。理由としてエクササイズによって上気道の筋力がアップするからじゃないかという仮説生まれる。この仮説を証明するために3つの無作為比較試験が実施された。
私が2009年5月に紹介した報告は、当にこの3つの臨床試験の1つである。
最初に上気道を筋肉を鍛えてSASの症状を改善させた報告は、ディジェリドゥー(didgeridoo:オーストラリアの先住民、アボリジニが使う管楽器の1つで、太くて長い空洞の木でつくられたパイプ様の楽器で低い反響音を奏でる)を吹いて上気道の筋肉を鍛え(1回25分間、週に6回、4ヶ月間吹く)てやると、AHIスコアは26%低下した。しかし、この研究にはいくつか問題点があり、コントロールに使ったグループは単に臨床試験に登録しただけの人が含まれていたり、人為的な評価以外の方法で経過がみられていないし、SASの評価がAHIではなく質問票のみだった。
8年の追跡期間中にエクササイズが増えた人や減った人がいる。エクササイズの時間が増えても変化しなかった人と比べてAHIスコアは変わらなかった、しかし、エクササイズの時間が減った人は、明らかにAHIスコアが悪化(上昇)した。BMI値で補正すると統計的有意差は先ほどの結果と同様に消失してしいトレンドだけになる。
きびしい物の見方をする人だったら統計的有意差が示されていないので、この報告だけでエクササイズがSASの重症度改善の独立因子になっているかどうかわからない。しかし、エクササイズが減量以外の何か別の影響を与えてSASの重症度が改善されている可能性は残り、以前報告された横断解析により得られたAHIスコアとエクササイズの負の相関(BMIで補正後)をサポートする結果にはなった。
11名の被験者にエクササイズ(毎週2時間のエアロビクス教室と2時間のウエイトトレーニングを6ヶ月間)をさせた小規模な介入試験で、体重が変化しなかったにも関わらず、AHIスコアが27%低下した報告や、10名のエクササイズグループ(呼吸法とエアロビクスを週に5時間、12週間)が体格の変化無くAHIスコアを27.5%低下させたという報告とも結果は一致した。
さらにもう一つ、エクササイズでBMI値が5%低下したらAHIスコアは45%低下した結果もある。
全身運動のエクササイズがどうしてSASの重症度改善に繋がるのか疑問は生まれる。理由としてエクササイズによって上気道の筋力がアップするからじゃないかという仮説生まれる。この仮説を証明するために3つの無作為比較試験が実施された。
私が2009年5月に紹介した報告は、当にこの3つの臨床試験の1つである。
最初に上気道を筋肉を鍛えてSASの症状を改善させた報告は、ディジェリドゥー(didgeridoo:オーストラリアの先住民、アボリジニが使う管楽器の1つで、太くて長い空洞の木でつくられたパイプ様の楽器で低い反響音を奏でる)を吹いて上気道の筋肉を鍛え(1回25分間、週に6回、4ヶ月間吹く)てやると、AHIスコアは26%低下した。しかし、この研究にはいくつか問題点があり、コントロールに使ったグループは単に臨床試験に登録しただけの人が含まれていたり、人為的な評価以外の方法で経過がみられていないし、SASの評価がAHIではなく質問票のみだった。
そして次の報告は私が2009年にとり挙げたもの。複雑な口腔咽頭エクササイズ(引き続き連絡をいただければ詳しい方法を教えますよ)を毎日30分、3ヶ月すればAHIスコアが39%低下した結果だ。このエクササイズでBMI値に変化は無かったけど頚部周径は短縮した。
最後の試験は、口腔内から電気刺激で口腔咽頭筋エクササイズを20分間、日に2度、8週間してもAHIスコアに変化がなかったため、3つの臨床試験で見解は一致しなかった。
今までは、睡眠中の上気道の筋力低下がSASの病態だと考えられていた。しかし、日中にエクササイズをすることで睡眠中の上気道の拡張能を改善させられていたんじゃないかと考えるようになる。
ここからは彼らのファンタジーだ。上気道の筋肉を鍛えることだけが重症度改善に繋がるのではなく、上気道の拡張能の維持も重要なんだと。体脂肪の体内分布も影響するという考えも生まれ、エクササイズによってBMI値が変化しなくても咽頭喉頭周囲の脂肪沈着の分布が変化している可能性があるという話になる。エクササイズによって中枢性の呼吸コントロールも改善され覚醒閾値にも影響を与えているという話に飛んでいく。全くもって推測の域を出ない話になっている。。考えが膨らんで仮説を立て実証していく研究者の楽しみがここにあるのは分かりますが。
さて、この報告にも多くの欠点がある。エクササイズを時間で評価をしているが強度の評価は欠落している。また、8年の長い経過での評価をしているが短期的なエクササイズの評価は含まれていない。どちらにせよエクササイズの効果は、減量効果以外に、上気道の筋力維持、脂肪分布の変化や生体反応の感受性の変化なんかも影響していることが分かった。
短期的な効果を得るために以前報告した咽頭喉頭エクササイズをすると効果はあるだろう。しかし、全身運動のエクササイズを取り入れなければ重症度は悪化してしまう。結局エクササイズをしないと健康的でいられないってことです。皆さん、ちゃんとエクササイズをしましょう。
引き続き、SASとエクササイズに関する情報はアップデイトしていきます。
では。
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